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年金制度の現状と課題【解説】

2004年改正(10)2004年改正のまとめ

2004年改正を総括しましょう。

まず、評価すべき点です。1つは、消費税率の引き上げによって、保険料率の引き上げ幅が抑えられたことです。厚生年金保険料率でいえば抑制幅は約3%です*1。具体的な方法として、基礎年金拠出金に対する国庫負担割合が3分の1から2分の1へ引き上げられ、その主な財源として消費税が想定されました*2。実際、2003年末に公表された与党税制改正大綱でも「消費税」が明記されています*3。「2007年度を目途に、(中略)、あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合う観点から、消費税を含む抜本的税制改革を実現する」。

こうした社会保険料の抑制と消費税率の引き上げといった負担構造の改革は、若い世代の家計および企業に多くのメリットを見出すことができます。例えば、国民年金保険料は、月17,920円の定額負担すなわち逆進的であり、全額免除者が増加し続けていることなどから将来の低年金も懸念されています。国民年金保険料が消費税によって一部でも肩代わりされれば、こうした問題の緩和が期待されます*4。

もう1つは、国民受けは悪くとも年金財政維持には欠かせない給付水準の抑制に取り組んだことです。その結果、所得代替率は当時の59.3%から2023年度には50.2%まで低下するとの見通しが示されました。

次に、問題点です。1つは、給付水準の抑制に目を背けていない点は評価されつつ、その手法として、マクロ経済スライドに「逃げた」ことです。マクロ経済スライドは、政府にとって好都合です。例えば、物価上昇率1%、スライド調整率0.9%と仮定します。年金額の改定率は0.1%(1-0.9)です。前年の年金額が10万円であれば、今年の年金額は100円増えます。政府は、年金財政の支出を抑えつつ、年金受給者に対しては「100円増えた」といい顔ができます。実際には、年金の購買力は低下しているのですが、額は増えているので全くのウソともいいきれません。

しかし、こうした虫のいい話も、2%程度の賃金上昇率と1%程度の物価上昇率のもとではじめて成り立つ願望に過ぎません。2004年改正後、実際にはそうならず、「逃げ」による大きな代償を支払うこととなりました。2004年改正時、マクロ経済スライドは2023年度には終了しているはずでしたが、現在も終わっておらず、ようやく終えることができるのは2057年度になりそうだとの厚労省の見通しです。しかも、これは出生率1.36人などの前提のもとでの計算であり、さらに後ろ倒しになることも十分あり得ます。結局、「逃げ」は通用しませんでした。

もう1つの問題点は、制度体系のあり方に関する議論の先送りです。本来、年金改正は、年金財政の維持と制度体系のあり方の2つに目が向けられなければなりません*5。ところが、2004年改正は、制度体系のあり方に関する議論は手薄でした。2004年7月、社会保障の在り方に関する懇談会、2005年4月、年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議*6が設けられたのがその証左です*7。懇談会は、石弘光氏(一橋大学名誉教授)、宮島洋氏(東京大学名誉教授)ら学識者6名と関係閣僚6名によって、両院合同会議は与野党の国会議員35名でそれぞれ構成されました。

2004年改正は、評価すべき点も問題点も、社会保障制度の議論のあり方に関し、多くの示唆を与えてくれます。(2026年4月21日)

*1 2004年改正(2)2004年改正の3つのポイント | 超党派年金制度改革データベースも参照。
*2 基礎年金拠出金については、第3号被保険者の費用負担 | 超党派年金制度改革データベースを参照。
*3 第28回社会保障審議会年金部会(2004年12月9日)資料1-2 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/dl/s1209-5b.pdf
厚生労働省年金財政ホームページ「平成16年年金制度改正における給付と負担の見直し」 https://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/zaisei/04/04-01f.html
*4 企業にとってのメリットは、厚生年金保険(負担3)事業主負担の経済的性質 | 超党派年金制度改革データベースも参照。
*5 2004年改正(1)そもそも年金改正とは | 超党派年金制度改革データベースを参照。
*6 衆議院「平成17年衆議院の動き 第5年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議」
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/ugoki/h17ugoki/05nenkin/nenkin.htm
*7 2004年改正法案には、次の附則が規定されました。「一(略)。二 前項の公的年金制度についての見直しを行うに当たっては、公的年金制度の一元化を展望し、体系の在り方について検討を行うものとする」https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/159/meisai/m15903159030.htm


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