今回から10回にわたり、2004年の年金改正について段階を追ってお話ししていきます。2004年改正は、基礎年金と第3号被保険者が導入された1986年施行の年金改正以降、今日までで最も大きな年金改正です。今回は、その導入として年金改正とはそもそも何を目的とすべきなのかについて整理します。
年金改正の目的は、大きく2つに分けることができます。1つは、年金財政の維持です。わが国の年金財政は、賦課方式を原則としています。賦課方式のもとでは、そのときどきの被保険者が払った保険料は、そのときどきの年金受給者の給付に充てられます*1。「方式」というと、確立された素晴らしい仕組みのようにも聞こえますが、お金を貯めておくのではなく右から左に流しているだけとも言えます。
「原則」と断っているのは、304兆円の積立金があるためです(2023年度 )。これは絶対額としては巨額です。しかし、年間五十数兆円の年金給付(2023年度は54.1兆円)を途切れることなく行っていくことを考えると全く十分な規模ではありません。実際、仮に積立金のみで給付をすれば6年も持ちません。原則は賦課方式なのです。よって、65歳以上人口の増加と64歳以下人口の減少に合わせ(図表)、大まかには①給付の抑制、②負担の引き上げによって年金財政を維持していかなければなりません。

年金改正のもう1つの目的は、制度体系、洋服に例えればデザインの見直しです。家族形態、働き方、および、政府に期待される役割などが大きく変わるなか、年金制度もそれに即したものへと見直さなければなりません。例えば、高齢者とりわけ女性の貧困対策は重要な課題です。そのほか、この連載で指摘してきたように、第3号被保険者、事業所ごとの被用者保険適用判定、年収の壁、保険料の算定に用いる標準報酬、在職老齢年金、および、国民年金保険料の定額負担など見直すべき対象をあげればキリがありません。
1986年施行の年金改正以降、5年に1度の年金改正は、1つめの目的である年金財政の維持にもっぱら焦点があてられてきました。もちろんそれは極めて重要なことであり、「100年安心」がうたわれた2004年改正もまさにそうでした。①と②の組み合わせにより、年金財政の維持が目指されたのです。ところが、②のうち基礎年金拠出金(第3号被保険者の費用負担を参照)への国庫負担割の3分の1から2分の1への引き上げには10年を要し、①のための仕組みとして導入されたマクロ経済スライドは2004年改正で想定されたようには残念ながら機能しませんでした。
*1 社会保障審議会年金数理部会「公的年金財政状況報告-2023年度-(ポイント)」https://www.mhlw.go.jp/content/12501000/001463989.pdf
(参照)
基礎年金と第3号被保険者の登場 | 超党派年金制度改革データベース
厚生年金保険(加入3)複数事業所勤務の場合 | 超党派年金制度改革データベース
厚生年金保険(加入4)106万円の壁というミスリード | 超党派年金制度改革データベース
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厚生年金保険(給付5)在職老齢年金 | 超党派年金制度改革データベース
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