超党派年金制度改革データベース

menu

PAGE TO TOP

年金制度の現状と課題【解説】

マクロ経済スライド調整期間の一致(6)国庫負担の増加

マクロ経済スライドの調整期間一致によって、基礎年金拠出金に対する国庫負担が増加します(図表1)。調整期間一致がなければ、基礎年金のマクロ経済スライド終了年度は2057年度でしたが、調整期間一致によって2036年度に前倒しされますので、国庫負担の増加は、2037年度以降ということになります*1。

なお、2025年の年金法改正成立を経て、厚労省のHPでは、終了年度、および、国庫負担が増え始める年度ともに1年後ろ倒しになっていますが*2、議論の大勢に影響はないので、ここでは2024年財政検証当初の数値を用います。

では、その国庫負担はどのように手当てされるのでしょうか。国庫負担とはいっても、経済成長による税収増への過度な期待を慎めば、税か国の歳出削減しかありません。ところが、厚労省のHPのQ&Aをみると*3、だいぶ先のことだから、その時になったら改めて考えるという程度のことしか書かれていません*4。

Q.基礎年金の底上げのためには、将来的に必要になる国庫負担の財源はどうするのですか。
A.基礎年金の底上げの措置に必要な追加の国庫負担は、令和6年財政検証の実質ゼロ成長を仮定したケースによると、2038年度から発生し、その規模は徐々に増加することが見込まれており、すぐに財源が必要となるものではありません。
その上で、この追加の国庫負担が必要な時期やその所要額は、社会経済情勢等により変動することから、仮にこの措置を実施する場合には、次期財政検証の結果等を踏まえつつ、制度を支える安定した財源の在り方についても適切に検討することとされています。

これは誠実な態度ではありません*5。2004年改正と比較すると明らかです。2004年改正の場合、年金改正法案提出を間近に控えた2003年12月、自由民主党・公明党の「税制改正大綱」では、基礎年金の国庫負担割合の引き上げに要する財源に関し、次のように踏み込んだ記述がなされていました*6。

1 平成16年度税制改正において年金課税の適正化を行う。この改正により確保される財源は、平成16年度以降の基礎年金拠出金に対する国庫負担の割合の引上げに充てるものとする。
2 平成 17 年度及び平成18年度において、わが国経済社会の動向を踏まえつつ、いわゆる恒久的減税(定率減税)の縮減、廃止とあわせ、三位一体改革の中で、国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しを行う。これにより、平成17年度以降の基礎年金拠出金に対する国庫負担割合の段階的な引き上げに必要な安定した財源を確保する。
3 (省略)
4 平成19年度を目途に、年金、医療、介護等の社会保障給付全般に要する費用の見通し等を踏まえつつ、あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合う観点から、消費税を含む抜本的税制改革を実現する。

消費税という言葉を包み隠すこともしていません。それでもなお、国庫負担割合引き上げの財源手当てには、2004年改正から10年を要したことも思い起こす必要があります*7。言うまでもなく、基礎年金の底上げとその財源とがセットになってはじめて政策として完結します。仮に基礎年金が底上げされたとしても、その財源が赤字国債、あるいは、真に必要な社会保障給付の削減となるのであれば、やらない方がよいかもしれません。あるべき政策形成に向け、まさに政治の責任が問われています。(2026年6月1日)

*1 マクロ経済スライド調整期間の一致(1) | 超党派年金制度改革データベースを参照。
*2 具体的には、適用拡大②(約200万人)の数値が使われています。
*3 厚生労働省「将来の基礎年金の給付水準の底上げについて」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00023.html
*4 国庫負担の財源が示されていない点については、自民党内あるいは野党からも批判がありました。『自民党・河野太郎氏「毒入りあんこ」年金法案修正巡り異論』(2025年5月26日 )https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA26BD00W5A520C2000000/
*5 この回答には留意すべき点が他にもあります。「実質ゼロ成長を仮定したケース」と聞くと、堅実な印象も受けますが、必ずしもそうではありません。ざっくり、実質GDP=労働力人口×1人当たり実質賃金であるとします。2024年財政検証では、労働力人口を左右する合計特殊出生率は1.36人、1人当たり実質賃金上昇率は0.5%が想定されています。これらは決して容易く実現できる数値とは言えません。
*6 次に抜粋があります。厚生労働省第28回社会保障審議会年金部会(2004年12月9日)資料1-2「基礎年金国庫負担割合の引上げについて」https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/dl/s1209-5b.pdf,br>
*7 2004年改正(2)2004年改正の3つのポイント | 超党派年金制度改革データベースを参照。


現状と課題一覧へ