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年金制度の現状と課題【解説】

マクロ経済スライド調整期間の一致(1)

前々回*1、報酬比例年金と基礎年金とでは、マクロ経済スライドの終了年度に大きなズレが生じる見通しであるとお話ししました。2024年7月に公表された財政検証では、報酬比例年金におけるマクロ経済スライドの終了は2026年度、よって、所得代替率は2024年度実績の25%から2026年度に24.9%へと0.1%ポイント低下しただけで以降は維持されます(図表)。ほぼ横ばいです。他方、基礎年金における終了は2057年度であり、所得代替率は2024年度実績の18.1%から12.8%まで低下します。約3割の大幅減です。しかも、これは合計特殊出生率1.36人などの前提のもとに計算されており、人口や経済の動向次第では一段の給付水準低下もあり得ます。

2024年財政検証を踏まえた2025年改正において、厚生労働省が焦点を絞ったのはこうしたズレの修正でした*2。財政検証では、人口と経済の前提のもと、将来の年金財政が計算されるだけではなく、何らかの制度改正を加味した「オプション試算」が併せて公表されます。2024年財政検証のオプション試算では、報酬比例年金と基礎年金のマクロ経済スライドの調整期間一致の効果が示されました(図表)。一致年度は2036年度とされています。それによると、報酬比例年金の所得代替率は、調整期間一致がなければ前掲のように24.9%で維持されるものが、調整期間一致により2%ポイント低下し22.9%となります。他方、基礎年金は、調整期間一致がなければ12.8%まで低下するものが、一致により3.9%ポイント改善し16.6%となります。厚生年金制度加入者であっても、差し引き1.9%ポイントの改善です。基礎年金にダラダラとマクロ経済スライドをかけ続けるのは回避すべきであり、それを食い止めるという調整期間一致の目的自体は悪くありません。

こうした調整期間一致は*3、異例の展開を辿ります。当初、厚労省は、調整期間一致を目玉とする年金改正法案提出を、2025年3月中旬と予定していました。ところが、調整期間一致に対し、自民党内で反対論が広がり、ようやく5月16日に提出された法案では、調整期間一致は削除されてしまいました。厚労省は、積立金の活用を通じて調整期間一致を図ると説明していたのですが、それに対し、活用ではなく流用であるという批判も国民の間から出ていました。こうした声を自民党は意識したものと思われます。

調整期間一致の削除を批判したのが立憲民主党です。野田佳彦代表は法案を「あんこの抜けたあんパン」と形容しました。調整期間一致という肝心の「あん」が抜けているという訳です。それを受け、5月28日、自民、公明、立憲民主党の3党により、修正案が国会に提出され、法案は6月13日に成立しました。もっとも、修正されたとはいっても、腰の引けた内容にとどまっています。調整期間一致を完全に葬り去るのではなく2029年の財政検証時に仕切り直しましょう――というものに過ぎないからです。

このように調整期間一致は宙ぶらりんな状態にあります。次回以降、厚労省の説明とは別の視点から調整期間一致について掘り下げていくこととします。(2026年5月1日)

*1 2004年改正(9)報酬比例年金と基礎年金のマクロ経済スライド終了年度のズレ | 超党派年金制度改革データベース
*2 マクロ経済スライドに関しては、本来、名目下限措置廃止も俎上に載せられるべきですが、議題となりませんでした。2004年改正(8)名目下限措置廃止の頓挫 | 超党派年金制度改革データベースを参照。
*3 厚労省は、「調整期間の一致」から「基礎年金の給付水準底上げ」へと呼び名を変えるようになりました。


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