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年金制度の現状と課題【解説】

賦課方式と積立方式(1)「公的年金の財源と給付の内訳」

急速な少子高齢化などを背景に、年金財政において賦課方式*1から積立方式への移行を求める声はかねてより根強くあります。他方、厚生労働省は、啓蒙マンガ「いっしょに検証!公的年金」*2などを通じ、賦課方式が必然であるかのような説明を展開しています。こうした対立、あるいは、すれ違いをどのように受け止めればよいのでしょうか。それを考える際、出発点となるのが、5年に1度の財政検証時に作成される「公的年金の財源と給付の内訳」です(図表1)*3。まずは、その成り立ちを押さえましょう。

ポイントは2つあります。1つは、給付が「過去期間に係る分」と「将来期間に係る分」とに分けられている点です。財政検証では、概ね100年間の公的年金の財源と給付についての見通しが作成されます(図表2)。財源は、保険料、国庫負担、積立金の3つです。例えば、2025年度はそれぞれ43.9兆円、13.8兆円、0です。給付は、報酬比例年金(2階部分)と基礎年金の2つであり、2025年度は計57.7兆円です*4。その給付が、「過去期間に係る分」と「将来期間に係る分」とに分けられています。

「過去」と「将来」の分岐点は、2024年財政検証の場合2024年度末であり、「係る」とは、被保険者が国に保険料を払い込む行為を指しています。わが国の公的年金制度は、被保険者が国に保険料を払い込むことによって受給権が発生する拠出原則を採用しています。国の側からみれば、保険料を受領すると、被保険者名・標準報酬額などを日本年金機構のコンピューターに記録し、その記録に基づいた給付義務を負うことになります。国債の購入者に対し国が償還義務を負うのとほぼ同様です。

要するに、「過去期間に係る」とは、2024年度末までに被保険者から国に保険料が払い込まれているという意味です。2024年度末時点において、過去期間に係る分は国に給付義務が発生しており、2025年度の55.7兆円(図表2)、2030年度の48兆円、2040年度の35兆円・・・これらは国として絶対に給付しなければなりません。通販に例えれば、販売業者は代金受領済なので、指定日に確実に商品を届けなければならないのです。

他方、「将来期間に係る」とは、2025年度以降、保険料が払い込まれる見込みであるという意味です。2024年度末時点では、国の側からみると保険料を受領していないので、年金給付義務も発生していません。

もう1つのポイントは、図表2の2025年度から2120年度の金額の2024年度価格への換算です。図表2の保険料、国庫負担、積立金、過去期間に係る分、および、将来期間に係る分の給付を2024年度価格に換算し合計するとそれぞれ1,500兆円、490兆円、300兆円、1,280兆円、1,020兆円となります(図表3)。

これらをバランス・シート状に描きなおしたのが「財源と給付の内訳」です(図表1)。なお、図表1では、給付についてさらに2階部分と基礎年金の内訳も示されています。例えば、過去期間に係る分はそれぞれ650兆円、630兆円です。このように、2024年度価格に換算することによって、積立金300兆円が、絶対額としては巨額であっても、過去期間に係る分の給付1,280兆円と比較すれば少額であることが分かります。「今まで払った保険料を返してくれ!自分で運用する!」と国に訴えても、残念ながら、国には返すお金がほとんどないのです。

以上が、「財源と給付の内訳」の成り立ちです。次回以降、これをもとに議論を進めていきましょう。

(2026年8月10日)

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*1  賦課方式については2004年改正(1)そもそも年金改正とは | 超党派年金制度改革データベースも参照。
*2 賦課(ふか)方式と積立方式 | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省
*3 厚労省の資料では「“参考”までに示している」と、参考の2文字がダブルクオーテーションで強調されており、渋々作成している模様です。第12回社会保障審議会年金部会(2012年4月24日)資料2―2 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000294x3-att/2r9852000002952f.pdf


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