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年金制度の現状と課題【解説】

基礎年金(給付3)年金への上乗せ-年金生活者支援給付金(その2)

前回、老齢年金生活者支援給付金の概要を紹介しました。高齢者の概ね6人に1人が年金給付への上乗せとして受け取っています。この支援金は、高齢期の低所得層の収入底上げとしての意義はありますが、課題も指摘できます。

第1に、給付要件すなわち対象者の絞り込み方の妥当性です。給付要件は、前年の年金収入とその他の所得の合計となっています。大きく2つの問題があり、1つは、金融資産や不動産といった資産が勘案されていないことです。例えば、多額の預貯金を持っていたり、広い家に住んでいたりしても、年金収入とその他の所得が少なければ、困窮しているとみなされ給付対象となります。もう1つは、所得が税務当局によって正確に捕捉されている保証がないことです。その典型がクロヨン問題です(国民年金(負担6)定額負担の再考を参照)。

第2に、支援金の目的を貧困対策として捉えた場合、効率的ではないことです。わが国の高齢者の貧困率は、男性16.6%、女性22.8%と、OECD加盟国平均の男性11.7%、女性16.9%を上回っています(図表1)。高齢者とりわけ女性の貧困対策は重要な課題です。

支援金が貧困対策として効率的ではない理由は、社会保険方式を採る年金制度との整合性を重視し、保険料免除期間が長いほど年金+支援金の額が低くなる設計となっているためです。こうした設計ではなく、例えば69,308円(基礎年金の満額)を保障すれば(図表2)、貧困率を効率よく下げることが可能になります。これは最低保障の発想です。

第3に、年金制度とチグハグな印象が拭えないことです。政府試算によれば、基礎年金の給付水準は現行の4分の3程度までの引き下げが必要とされています*1。これは、基礎年金の月額が6.8万円から1.6万円減の5.2万円になるイメージです。国民年金財政を維持するためとはいえ、年金生活者の側からみれば深刻な事態です。当然ながら2025年の年金改正でもこうした事態への対応が課題となりましたが、議論はほとんど深まりませんでした。基礎年金のこうしたいわば地盤沈下に手をこまねいたまま、そこに月額平均0.4万円程度の支援金を上乗せするというチグハグな状況になっています。

このように、老齢年金生活者支援給付金の課題を整理すると、そもそも基礎年金のあり方について根本的な見直しが必要であることが改めて確認されます。また、高市早苗首相が導入に意欲を示す給付付き税額控除は、その設計次第で、年金生活者支援給付金と対象者および機能が重複してきます。これらの整理も必要となるでしょう。

*1 基礎年金の所得代替率(2人分)は、2024年の36.2%から2052年には27.2%までマクロ経済スライドによって低下させる必要があるとの試算が示されています。マクロ経済スライドについては改めて解説します。なお、政府資料では、モデル世帯の定義(所得代替率(1)モデル世帯の留意点を参照)に合わせるためか、基礎年金の所得代替率がしばしば2人分で示されますが、分かりやすいとは言えません。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00023.html


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