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年金制度の現状と課題【解説】

基礎年金(給付1)満額と実際の給付額

老齢基礎年金(以下、単に基礎年金)の平均額は、月額59,310円(2024年度)です*1。同年度の新規裁定年金の満額68,000円とは9,000円弱の乖離があり、その要因として主に5つを指摘できます。

1つは、加入期間の不足です。平均加入期間は405か月(2024年度)と満額に必要な480か月に達していません。例えば、保険料の未納期間がある場合、あるいは、1991年3月以前すなわち20歳以上の学生が国民年金に強制適用となる以前に大学を卒業し、60歳で退職した場合などが考えられます(国民年金(負担4)20歳以上の学生の強制適用を参照)。

2つめは、保険料免除の影響です。免除を受けると、全額、4分の3、2分の1、4分の1といった免除の割合に応じて年金は減額されます。よって、免除者が多く、かつ、免除割合が高いほど平均額は低下します。近年の免除者の増加は今後の低年金の要因として懸念されます(国民年金(負担3)保険料納付率と全額免除を参照)

3つめは、繰り上げ受給の影響です。受給開始年齢は65歳を原則としつつ60歳から64歳の間に繰上げできます。その際、年金額は減額されます。年金受給者3,346万人*2のうち繰り上げ受給者は340万人います。繰り上げ受給は平均額を押し下げ、繰り下げ受給者84万人による押し上げ効果を含めた、トータルの影響は月千数百円程度の押し下げとみられます*3。

4つめは、新規裁定年金と既裁定年金の年金額改定方法の違いによる影響です(厚生年金保険(給付2)年金額改定の原則を参照)。例えば、ある年度T年度の新規裁定年金が70,000円、賃金上昇率が6%、物価上昇率が2%であるとします。T+1年度の新規裁定年金は6%増の74,200円、他方、T年度に年金受給を開始した人のT+1年度の年金額は2%増の71,400円です。T+1年度の平均額は72,800円になります。よって、長寿化すなわち受給期間の長い人が増えるほど、平均額は低下します。

5つめは、1986年4月に第3号被保険者の仕組みが導入される以前、すなわち専業主婦(夫)は国民年金制度に任意加入であった時代の影響です*4。未加入であれば、その分平均額は押し下げられます。平均額は、男女別にみると男性61,595円、 女性57,582円となっており、そうした影響が出ているとみられます。

年金の議論において、とかく満額に関心が向かいがちです。厚生労働省が示すモデル世帯の年金額における基礎年金も満額が用いられています。しかし、満額もそこに届かなければ絵に描いた餅です。実際に受け取っている額に対しても十分な関心が払われなければなりません。

*1 厚生労働省「第108回社会保障審議会年金数理部会」資料2のP8、老齢年金受給権者平均年金月額 https://www.mhlw.go.jp/content/12501000/001646021.pdf
*2 3,346万人は、正確には25年以上の加入期間がある老齢年金の「年金受給権者」の人数です。ここでは、用語の馴染みやすさを優先し「年金受給者」と表記しています。
*3 社会保障審議会年金数理部会「公的年金財政状況報告-2023年度-」図表2-2-14。老齢年金の平均年金月額 57,584円(2023年度)に対し、繰上げ・繰下げ等除く平均年金月額として59,089円という金額が示されています。
*4 1986年3月以前に、国民年金に加入しておらずとも、加入期間にはカウントされます。https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/jukyu-yoken/20140421-05.html


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