保険料の納付率は年金制度を評価するうえで重要な指標の1つです。低い納付率は低年金の要因となるためです。第1号被保険者については、現年度納付率と最終納付率の2つに注目が集まります(図表1)。現年度納付率とは、ある年度T年度に納付されるべき保険料のT年度中の納付率です。
保険料は、過去2年分の納付が可能であるため、T年度の納付率はT+2年度末に確定します。この納付率が最終納付率です。最終納付率の推移をみると、平成18年度から低下していましたが、平成22年度に64.5%のボトムをつけ、以降は一貫して上昇し、令和2年度分で遂に80%を突破、令和4年度は84.5%となっています。現年度納付率もほぼ同様の推移を辿り、令和6年度は78.6%になっています。

こうした納付率の顕著な改善は、「納付率は年金制度に関する信頼のバロメーター」*1 との認識のもと、日本年金機構の努力の反映として最大限評価されるべきでしょう。日本年金機構は、2007年に表面化した消えた年金記録問題などで批判を受けた社会保険庁の後継組織の1つとして平成22年(2010年)に発足しました。
こうした努力があるとはいえ、よりよい年金制度を追求する観点から、この納付率は割り引いて見る必要もあります。第1号被保険者には、保険料の全額免除と一部免除*2 の仕組みがあり、納付率はおおまかにいえば全額免除を除いたあとの被保険者を対象に計算されているためです。20年前の平成16年度(2004年度)には、第1号被保険者は2,183万人おり、そのうち全額免除は458万人でした(図表2)。おおよそ5人に1人の割合です。ところが、令和6年度(2024年度)、第1号被保険者は1,347万人に減っているものの、全額免除はむしろ増加し593万人に達しています。おおよそ5人に2人の割合です。
すなわち、納付率が顕著に改善しているとしても、それは第1号被保険者から全額免除を除いたうえで計算された数値であることに十分な留意が必要です。令和6年度でいえば、免除者以外721万人と一部免除33万人、計754万人が納付率の計算対象となっているに過ぎません。

免除も低年金の要因になってしまいます。全額免除には、①法定免除、②申請(全額)免除、③学生納付特例、および、④納付猶予の4種類があり、それぞれ146万人、230万人、159万人、58万人います(令和6年度)。①と②は、基礎年金の満額の2分の1の給付となります。国庫負担分だけは給付しましょうという趣旨です。③と④の性格は、飽くまで「猶予」であり、後からの保険料納付が想定されています。ところが、追納率は、学生納付特例を受けた場合8.9%、納付猶予を受けた場合7.0%にとどまっており*3 、実際には未納と変わらなくなっています。
納付率だけでなく免除者数と追納率の動向にも十分な注意を払っていくとともに、こうした現状を目の当たりにすると、月額17,510円という国民年金保険料の水準と定額負担というあり方についても議論を深める必要があります(国民年金(負担2)保険料の逆進性を参照)。
*1 厚生労働省第1回年金保険料の徴収体制強化等に関する専門委員会における髙鳥修一厚生労働政務官の挨拶。https://www.mhlw.go.jp/photo/2013/10/ph1011-02.html
*2 一部免除には、3/4免除、1/2免除、1/4免除)の三段階があります。
*3 厚生労働省第22回社会保障審議会年金部会2024年12月3日 資料2。