超党派年金制度改革データベース

menu

PAGE TO TOP

年金制度の現状と課題【解説】

2004年改正(9)報酬比例年金と基礎年金のマクロ経済スライド終了年度のズレ

2004年改正時、マクロ経済スライドの終了年度は、報酬比例年金、基礎年金とも2023年度と見通されていました(2004年改正(6)2004年改正時のシナリオ | 超党派年金制度改革データベースも参照)。報酬比例年金と基礎年金のそれぞれの所得代替率は、2004年度実績の25.7%、16.9%から、2023年度には21.7%、14.2%まで低下しつつ、以降は維持されるとの試算でした(図表)。報酬比例年金と基礎年金の相対的な規模は変わりません。

ところが、2009年2月に公表された第1回財政検証で、このシナリオは早々に崩れてしまいます。マクロ経済スライドの終了年度(以下、終了年度)は報酬比例年金と基礎年金とで大きなズレが生じるとの結果が示されました*1。報酬比例年金の終了年度は2019年度に前倒しされ、その結果、最終的な所得代替率は2004年改正の試算(前掲の21.7%)よりも1.7%ポイント高い23.4%となります。他方、基礎年金の終了年度は2038年度へ後ろ倒しされ、その結果、最終的な所得代替率は2004年改正の試算(前掲の14.2%)よりも0.8%ポイント低い13.4%となります。

以降、第2回(2014年)、第3回(2019年)、第4回(2024年)と財政検証の回を重ねるごとに、第1回財政検証結果の傾向がより顕著になっていきます。報酬比例年金は、それぞれの財政検証時からアッという前にマクロ経済スライドを終えることができます。よって、所得代替率の低下もわずかです。直近の第4回財政検証結果では、報酬比例年金の所得代替率は2024年度実績の25%から2026年度に24.9%へと0.1%低下しただけで以降は維持されます。

他方、基礎年金は、財政検証ごとに、マクロ経済スライドの終了年度がどんどん後ろ倒しになっていきます。直近の第4回財政検証結果では、基礎年金のマクロ経済スライド終了年度は33年後の2057年度であり、所得代替率は2024年度実績の18.1%から12.8%まで低下します。要すれば、「基礎年金」という全国民に共通し、かつ、生活の基礎として期待される年金の給付水準が地盤沈下し、そこに現在とほぼ変わらない給付水準の報酬比例年金が上乗せされるという主客転倒した構図です。

こうした事態に陥った原因については、厚生労働省のホームページで解説されています*2。具体的には、基礎年金拠出金の仕組み、年金額改定ルール、および、基礎年金の給付体系などに難点があったということです。もっとも、厚労省の解説は技術的な側面に偏っており、根本的な原因については述べられていません。根本的な原因とは、わが国の年金制度において「基礎年金」としてあるべき給付水準について国民的合意が欠けているということです。制度改正の議論を進める際、この点にこそ目が向けられなければなりません。(2026年4月10日)

*1 (a)マクロ経済スライドが長期化するという現象と(b)報酬比例年金と基礎年金とで終了年度が異なるという現象のうち、本稿はもっぱら(b)に焦点をあてています。
*2 厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方」第7マクロ経済スライドによる給付水準調整期間 https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_007.html


現状と課題一覧へ