国民年金制度の加入者とは誰でしょうか。「日本に住む20歳以上の人全員が加入する国民年金」と厚生労働省は説明しています(図表1)。ところが、この説明では制度の実態を上手く理解できないことは、以前お話しした通りです(年金制度は「2階建て」ではないを参照)。以下、改めて整理します。

厚生年金保険の加入者は、国民年金法第7条において国民年金の第2号被保険者と位置付けられています。ところが、厚生年金保険の加入者が払っているのは「厚生年金保険料」という名の保険料だけです。その内訳として国民年金保険料が示されている訳でもありません。さらに言えば、受け取るのは国民年金ではなく基礎年金です。このように、「国民年金に同時に加入している!」と言われても、厚生年金保険の加入者にとって実感が持てないのが現実です。法律がわたしたちの慣習や常識に沿っていないのです。
イギリスの古い格言に「議会は、男を女にし、女を男にすること以外は何でもできる」というものがあります。この格言が示す通り、自然の摂理を除けば、理屈の上では議会はどのような法律でも作れます。しかし、仮に法律を作ったとしても、それが社会で正しく機能する保障はありません。正しく機能するには、その法律がわたしたちの慣習や常識に沿っている必要があります。「国民年金保険料」という名の保険料を払うことで、国民年金に加入しているという実感が伴うのです。払ったら貰う、払わなければ貰わない、そういうった普通の感覚です。
より端的なのが第3号被保険者です(第3号被保険者の費用負担を参照)。第2号被保険者を夫(妻)に持つ一定収入以下の妻(夫)が、「あなたは第3号被保険者です」と厚労省から言われたとしても、保険料を払っている訳ではなく、日本年金機構における書類上の話に過ぎません。第2号被保険者と第3号被保険者という分類は、40年前の年金法改正で導入されましたが、私たちの慣習や常識と乖離した立法のまま今日に至っているといえます。
つまるところ、国民年金制度の真の加入者は、月々17,510円の国民年金保険料が課される第1号被保険者のみと捉えるべきでしょう。その第1号被保険者は、現在1,394万人います(図表2)。就業形態別の内訳をみると、就業者は963万人、非就業・不詳431万人です。まず、就業者のうち、厚労省の説明では「自営業者、学生など」と表記されているものの(図表1)、実際には被用者が506万人と最も多く、他方、本来の加入者として想定されていた自営業者は家族従業者を含めても311万人に過ぎません。被用者でありながら第1号被保険者となっているのは、もっぱら厚生年金保険制度への加入には複数のハードルがあるためです(厚生年金保険(加入1)適用事業所、厚生年金保険(加入2)被保険者資格、厚生年金保険(加入3)複数事業所勤務の場合を参照)。その是正は、年金制度改革にとって極めて重要な課題の1つです。
次に、非就業者・不詳431万人には、20歳以上の学生や失業者が分類されています。このように、第1号被保険者は多様な属性によって構成されています。
