年金額は毎年度改定されます。年金が、現役世代の賃金上昇、あるいは、物価上昇に取り残されないようにするためです。新たに受け取り始める年金を新規裁定年金、既に受け取っている年金を既裁定年金といい、それぞれ賃金上昇率、消費者物価上昇率で改定されるのが原則です(ただし、後に触れるように現在この原則はいったん棚上げされています)。なお、「裁定」とは、日本年金機構による給付の種類(老齢・遺族・障害)と額の確認を指し、加入者の請求に基づき行われます。
毎年、年初に厚生労働省から新規裁定年金に関し、新しい年度の改定率と併せて給付額が例示されます(以下「お知らせ」) *1。「お知らせ」では、「国民年金(老齢基礎年金)」という表記がなされ、厚生年金保険加入者については、モデル世帯による年金額の提示が前面に出ているなど、決して理解が容易とはいえません(年金制度は「2階建て」ではないと所得代替率(1)モデル世帯の留意点を参照)。
「お知らせ」のなかで、国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分)とあるのは、国民年金と厚生年金保険に計40年間加入した場合、給付される基礎年金という意味です。給付されるのは基礎年金であり、国民年金ではありません。令和7年度の基礎年金は月額69,308円となっています。
厚生年金の年金額232,784円は、「お知らせ」に注記されているように平均的な収入で40年間就業したサラリーマンの夫と専業主婦の妻から成る「モデル世帯」のものです。よって、この金額から基礎年金2人分を差し引いた94,168円が夫の報酬比例年金ということになります。なお、「お知らせ」の※2に記載されている「受け取り始める」というのが新規裁定年金であることを意味しています。
モデル世帯の定義は、年金財政の健全性を時系列で測る物差しとしては意味があります。もっとも、1人ひとりの生活者の視点に立つと、適当とは言えません。「お知らせ」の年金額の例示としては、基礎年金の満額、および、平均的な収入で40年間就業した場合に受け取り始める報酬比例年金とした方が分かりやすいといえましょう。
*1「令和7年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は前年度から 1.9%の引上げです~」https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/001436802.pdf
