第3号被保険者の97.9%が女性です(図表)。そのうち6割近くは就業者であり*1、「壁」を意識し、就業調整している人はここに含まれます。もちろん、年金法は男性が第3号になることを妨げていません。それにもかかわらず、第3号が極端に女性に偏っている現状はどのように捉えられるべきでしょうか。なお、以下、検討の対象としているのは第3号という仕組みであり、第3号となっている人ではありません。

この点を考える際、選択的夫婦別姓の導入是非をめぐる議論が参考になります。民法第750条は、婚姻時の夫婦同姓を求めていますが、男女何れかの姓としており、文言上は男女を差別するものとはなっていません。しかし、弁護士の林陽子氏は、編著のなかで、国連の女性差別撤廃条約における考え方を引用し、事実上の状況の評価が必要であると述べています。同条約は、わが国も1985年6月に締約しています。第3号の創設が盛り込まれた年金法改正成立(同年4月)とほぼ同時期です。
「締約国の差別撤廃義務とは形式的なものであってはならず、女性が社会の中でおかれた事実上の状況を評価したうえで、実質的な平等を確保するものでなければならないとしています。また、条約は直接差別のみならず間接差別を禁止しており、男女のいずれかがそれまでの氏を喪失しないことには婚姻ができず、統計上は96%は女性が旧姓を喪失している現状からすると、民法の規定は条約が禁止する差別であることは疑いのないことと思われます」(林(2011))。なお、婚姻時に夫の姓が選択されている割合は、直近では94.1%(2024年)となっています*2。やはり極端に偏った数字といえます。
この議論を第3号の仕組みにあてはめると、確かに年金法は、男女を差別するものではありません。実際、男性の第3号も2.1%ながら存在します。もっとも、第3号の97.9%が女性であり、約4割が非就業となっている、あるいは、就業していても就労調整を行っている人がいる事実上の状況を踏まえれば、第3号という仕組みは女性差別撤廃条約が禁止する差別であるという解釈が成り立ちます。第3号という仕組みに対しては、第2号の夫を持つ専業主婦優遇という側面に関心が集中しますが、同時に、女性差別になっている可能性にも目が向けられるべきでしょう。(2026年7月3日)
(参考文献)
林陽子編著(2011)『女性差別撤廃条約と私たち』信山社
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*1 厚生労働省「令和4年公的年金加入状況等調査」。女性の第3号被保険者は723万人、そのうち就業者は55.6%の402万人となっています。
*2 厚生労働省「令和6年人口動態統計」保管統計表(報告書非掲載表)、婚姻 第3表 婚姻件数(当該年に結婚生活に入り届け出たもの再掲)、都道府県(特別区-指定都市再掲)・夫の氏-妻の氏別