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年金制度の現状と課題【解説】

2004年改正(5)マクロ経済スライドの終了年度の決め方

マクロ経済スライドの終了見込み年度は、どのように決められるのでしょうか。財政検証すなわち年金財政の見通しを作成するなかでそれは決められるのですが、以下数値例を設けるにあたり次のような想定を置きます。話を簡単にするためです。

〇現在を第0期とし、将来にわたり第1期から第10期までを見通し作成の対象期間とする。
〇年金財政の収入は保険料のみ、支出は給付のみのとする。
〇第0期の積立金残高はゼロとする。

そのうえで、まず、年金財政の収入を計算します(図表1)。第0期のわが国全体の被保険者は100人、1人当たり賃金は10.6万円とします。保険料率を20%とすれば、保険料は計211万円です。第1期以降、被保険者の減少率は0.5%、賃金上昇率は2%とすると、第1期から10期まで保険料を計算できます。例えば、第1期214万円、第2期217万円、という具合です。その保険料を現在価値に換算し(割引率5%とします)、合計すると1,759万円となります。






次に、年金財政の支出を計算します(図表2、左)。第0期のわが国全体の年金受給者は40人、1人当たり年金額は5万円とします。すると、給付は200万円です。このとき、所得代替率は1人当たり年金額5万円を1人当たり賃金10.6万円(図表1)で割った47%になります。第1期以降、年金額は原則通り賃金上昇率2%で改定されるとすると、第1期から10期の給付の現在価値の合計は1,902万円となり、保険料の現在価値の合計1,759万円をオーバーしてしまいます。

そこで、給付の現在価値の合計が1,759万円に収まるように、第1期からマクロ経済スライドを適用していくことになります(図表2、右)。スライド調整率(2004年改正(3)マクロ経済スライドとは | 超党派年金制度改革データベース参照)を仮に2%とすると、年金額の改定率は0%(賃金上昇率2%-スライド調整率2%)になります。第5期までマクロ経済スライドを適用すれば、第6期以降は原則通り賃金スライドに復帰しても、給付の現在価値の合計は1,759万円になります。よって、この第5期がマクロ経済スライドの終了期となります。第1期から5期にかけて所得代替率は低下していきますが、第5期以降は43%で一定になります。

このように、期ごとに収入と支出が一致している必要はなく、第1期から10期までトータルでみて収入と支出が一致すればよいとういうのが財政検証の発想です。数値例を改めて整理すると、第1期から6期までは保険料が給付を上回り、第7期以降は大小関係が逆転し、給付が保険料を上回っています(図表3)。第1期から6期まで保険料が給付を上回る分は積立金として積み立てられ、第7期以降は、保険料に加え、積立金の元本取り崩しと運用益を使いながら給付を行っていくことになります。第10期の収支は24万円のマイナスですが、第9期の積立金24万円とその運用益をもって、マイナス分を埋め合わせることが出来ています。



以上、話を簡単にするための想定を置いてきましたが、実際の財政検証では次のようになっています。

〇財政検証の対象期間はおおむね100年間。例えば、2024年財政検証では、2024年度から2120年度まで。
〇年金財政の収入は、保険料のほか国庫負担があり、支出は、給付のほか基礎年金拠出金がある(第3号被保険者の費用負担 | 超党派年金制度改革データベース参照)。
〇積立金が約300兆円ある。
〇次のように財政検証の対象期間において収入と支出の現在価値の合計が等しくなるよう計算されている(厚生年金保険と国民年金の合計。積立金は現在の残高)*1。
 収入:給付1,340兆円+基礎年金拠出金960兆円=2,300兆円
 支出:保険料1,500兆円+国庫負担490兆円+積立金300兆円=2,300兆円
〇財政検証は、厚生年金保険と国民年金それぞれについて行われる。

ここまで計3回、マクロ経済スライドについて理論上の話をしてきました。しかし、現実には、マクロ経済スライドは2004年改正で想定されたようには機能しませんでした。

*1 厚生労働省「2024年財政検証結果レポート」P348 人口:中位推計 経済:過去30年投影ケース https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/2024report3.pdf


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