マクロ経済スライドは、年金財政を預かる厚生労働省の立場に立てば年金財政の維持に欠かせないのですが、家計の側からみれば年金給付水準の低下に他なりません。よって、出来る限り早期のマクロ経済スライド終了が望まれます。厚生労働省は、5年に1度の財政検証の都度、マクロ経済スライドをいつ終えることが出来るか、見通しを作成します。これまで、2009年を第1回とし(2004年までは財政再計算と呼ばれていました)、2014年、2019年、2024年と計4回の財政検証が行われています。
マクロ経済スライドをいつ終えることが出来るか――それは人口と経済の前提の置き方に依存します。とりわけ注目されるのは次の4つの変数です*1。
人口 出生率
平均寿命
経済 賃金上昇率
積立金の運用利回り
2009年の財政検証を例にとりましょう。2009年を例にとるのは計4回のなかでも比較的シンプルで見やすいためです。2009年財政検証では、人口と経済の前提について、それぞれ低位、中位、高位の3つが設定されていました(図表)。例えば、基本ケースとされる出生中位・死亡中位・経済中位の場合、マクロ経済スライド終了年度は2038年度です。
死亡低位(平均寿命が延びる)、あるいは、経済低位であれば、終了年度はそれぞれ2041年度、2043年度まで延びます。他方、死亡高位、あるいは、経済高位だと、終了年度はそれぞれ2035年度、2037年度に短縮されます。
図表のなかで、マクロ経済スライドを最も早く終えることができる出生高位・死亡中位・経済高位では2032年度、逆に最も長くなる出生低位・死亡中位・経済低位では2048年度となっています。このように、人口と経済の前提の置き方いかんによって、マクロ経済スライド終了年度の見通しが大きく異なります。よって、人口も経済も合理的な設定が心がけられなければなりません。この点は、改めて深掘りします。

なお、財政検証の結果は、2014年以降大変見にくくなっています。例えば、直近の2024年財政検証では、経済前提は次の4つとなっています。
・高成長実現ケース
・成長型経済移行・継続ケース
・過去30年投影ケース
・1人当たりゼロ成長ケース
偶数ケースなので中心が存在せず、基本となるべきケースについて見当をつけようとしてもそれも難しいですし、それぞれのケースの大小関係も不明です。例えば、厚生労働省は、「高成長実現ケース」を「成長型経済移行・継続ケース」よりも高位に位置づけているようですが、果たしてそうした意図を汲み取れる人がどれだけいるでしょうか。
*1 このほか、マクロ経済スライドがあるもとでは、消費者物価上昇率も重要なのですが、今回は、話を簡単にするため省略します。