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年金制度の現状と課題【解説】

130万円の壁(3)可処分所得の低下

130万円が「壁」と言われるのは、就労調整の誘因となっているためです。妻の年収が130万円を超えると、社会保険制度上、夫の被扶養から外れ、第2号被保険者あるいは第1号被保険者として自ら社会保険料を負担するにようになります。前回述べたように「年収」という言葉を使うのはためらわれますが、煩雑さを回避するため、やむをえません。では、可処分所得の低下幅はどの程度であり、主たる要因は何でしょうか。なお、便宜的に第2号被保険者の夫と第3号被保険者の妻を想定しますが、夫と妻を逆にしても議論は成り立ちます。以下の計算はいくつかの仮定を置いています。

第3号から第2号になると、その途端、可処分所得は約18万円低下します(図表の青い線)。年収が増えたのに可処分所得が減る逆転現象です。全くおかしな仕組みです。

低下幅は、暗算でもざっと計算可能です。第2号の社会保険料は下記の通り計約30%です*1。年金が18.3%と全体の3分の2近くを占めています。社会保険料は原則労使折半ですから、130万円に15%をかけると本人負担は19.5万円となります。社会保険料の本人負担は、税金の計算時に所得控除されるので、税額はその分軽くなり、可処分所得の落ち込み幅は前掲の約18万円となります。可処分所得を年収130万円時と同水準まで戻すには年収153万円が必要になる計算です。

   

第3号から第1号になった場合、可処分所得の低下幅は28万円と一段と大きくなります(図表の赤い線)。計31.1万円になる社会保険料のなかでもやはり年金が全体の3分の2超を占め21.5万円です。市町村が保険者となっている国民健康保険の保険料は、下記の通り医療分、後期高齢者支援金分など4つの項目から構成されており、ある自治体を例にとれば、計9.6万円です。可処分所得を年収130万円時と同水準まで戻すには年収約165万円が必要になる計算です。

   

被扶養から外れた際に生じ得る経済的デメリットは、こうした社会保険料負担だけではありません。例えば、夫の勤務先の家族手当です。人事院の調査によれば*2、民間事業所の約半数で配偶者を対象に家族手当が支給されており、配偶者の収入制限として130万円が用いられるケースが少なくありません。

あるいは、夫の加入する健康保険の付加給付もそうです。公務員の共済組合、あるいは、企業の健康保険組合のなかには、医療費の自己負担に上限を設ける仕組みがあります。それが付加給付です。仮に20万円の医療費がかかったとします。通常であれば自己負担はその3割の6万円ですが、自己負担上限額が2.5万円に設定されていたとすると、それを上回った3.5万円が付加給付として給付されます。130万円の壁を超えて、これらが失われるとなると、家計にとって壁はより高く感じられるかもしれません。

年収が増えれば、可処分所得も増える――そうした当たり前の仕組みが強く望まれます。(2026年6月26日)

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*1 このうち子ども・子育て支援金は、理論的には社会保険料とは言えませんが、政府は社会保険料と整理しています。
*2 人事院「民間給与の実態(令和6年職種別民間給与実態調査の結果)」表12家族手当の支給状況 https://www.jinji.go.jp/kyuuyo/kouho_houdo/toukei/minn/minnhp/minR06_index_00001.html


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