国会議員の議員年金ほど極端な優遇ではないが、やはり特権的な色彩を帯びていたのが共済年金だ。共済年金には大きく国家公務員共済組合(国共済)、地方公務員共済組合(地共済)、そして私立学校教職員共済制度の3つがある。それぞれ財務省、総務省(旧自治省)、文部科学省の所管が所管している。
2003年12月2日付の日本経済新聞は、年金問題をテーマにした連載記事「年金を問う」で次のような趣旨を報道した。
公務員の多くは共済年金のほうが手厚いと信じ込んでいることを如実に示すエピソードだろう。官尊民卑の年金格差と言ってよいかもしれない。
年金の官民格差を緩和したり解消させたりする必要性は、じつは古くから指摘されていた。自民党の加藤紘一衆院議員(故人)は1977年(昭和52年)4月の衆院社会労働委員会で「公務員などの共済年金と民間サラリーマンの厚生年金を比べると、共済はもらえる年金額も高く受給者も多いのに、安い掛け金で済んでいる」と問題提起していた。いまから半世紀ほども前の話である。
だが緩和や是正は遅々としてすすまなかった。厚生年金を公務員共済年金と統合させる方針を政府が閣議決定したのは1984年。時の首相は中曽根康弘氏である。統合には共済年金の優遇を解消するのが大前提だ。厚生年金の給付を抑制すべきだと声高に唱える大蔵官僚も、共済年金の優遇解消には背を向けていた。閣議決定に持ち込めたのは、中曽根氏のリーダーシップあってこそだった。
だがその後も、官僚組織はサボタージュをつづけ、官と民の年金統合は棚上げされた。彼らが重い腰を上げたのは、2004年の年金制度改革法の成立と時を同じくして、議員年金や共済年金への国民の厚遇批判が高まったのがきっかけだった。
年金の官民格差をいち早く問題提起
した加藤紘一氏(日経電子版から)
共済年金の優遇は、①企業年金のように公的年金に上乗せして支給される「職域加算」、②かつての公務員恩給に相当する額を税財源によって支給する「追加費用」――の2つだ。
2006年時点で、職域加算の支給額は国・地方・私学の3共済平均で月額1万4千円程度。これは確定給付型の企業年金の平均よりも低い。ただし企業年金は退職金の一部である。たとえば、会社員が退職するときには退職金総額の半分を一時金でもらい、残り半分は年金として受け取るといった選択をするケースが少なくない。かたや国・地方の公務員は年金の職域加算とは別に、退職金が満額支給されることをふまえれば、職域加算は撤廃するのが当然だった。
追加費用はその成り立ちに説明が必要だろう。公務員には明治期から税財源による恩給制度があった。1961年に国民皆年金が確立するとともに、政府は公務員恩給を廃止して共済年金に一本化したが、この時点で在職していた公務員には恩給に相当する額をもらう権利をもたせた。恩給受給権を憲法が保証する財産権とみなし、追加費用と呼ぶことにしたのだ。その総額は04年度時点で1兆7千億円。お手盛りと言ってよかろう。
1961年以降に公務員になった人には追加費用は払わない。このため、追加費用の総額は毎年少しずつ減り、2060年代初頭にゼロになる計算だ。
共済年金の優遇は撤廃するのが厄介なしくみだった。官僚組織の保身にメスを入れるのは、国民世論の支持を背に受けた政治家の役割である。加藤紘一氏には先見の明があった。