わが国の所得代替率の定義の是非については、国会でも採りあげられたことがあります(2016年10月21日衆議院厚生労働委員会)。その模様は、翌日の新聞でも報道されたのですが、厚生労働省は、そのうち1紙に対し抗議をし、訂正を求めるという事態に至りました。同紙の見出しは「年金 不適切な試算 厚労省 支給割合 高く算出」でした。文面は、厚生労働省のHPに現在も掲載されています。
厚労省の主張は4つありますが、なかでも同省が強調しているのは次の2つです。第1に、税と社会保険料の扱いが分母と分子で平仄が合っていないことをはじめわが国固有の所得代替率の定義は、国民年金法に規定されたものであって、数値を高く見せることを意図したものではない。
第2に、所得代替率50%の確保という2004年の年金改正の目標は、やはり年金法に規定されている通り、モデル世帯という物差しで測るものであり、それ以外の物差し、例えば、単身世帯における所得代替率で仮に50%を割り込んだとしても、それは目標に反するものではない。
このように、所得代替率の定義は、飽くまで法に従ったものであることを厚労省は強調しています。他方、定義に課題があることは認識されているようです。抗議文は次のようにしめくくられています。
「なお、今後の所得代替率の指標としての在り方については、共働き世帯の増加といった働き方や単身者の増加といった社会経済情勢の変化を踏まえ、現在のサラリーマンOBと専業主婦というモデル世帯の在り方も含め、次期財政検証に向けて議論する課題であり、平成28年10月21日の衆議院厚生労働委員会において、その旨を、塩崎厚生労働大臣は、長妻昭議員に対し答弁した」
まさに、そうした議論こそが求められているといえましょう。
【参考】
平成28年10月22日付け 朝日新聞の所得代替率の記事について抗議し、訂正を求めました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000140817.html