前回までAさんはX社のみに勤務するとの想定でした。では、AさんがX社だけでなく、Y社にも勤務する場合、Aさんの年金への加入はどうなるのでしょうか。X社、Y社とも従業員51人以上、Aさんは、いずれの会社においても、所定内賃金月額87,000円、週所定労働時間19時間、雇用期間の見込み2か月以上であるとします。Aさんは学生ではありません。
X社とY社におけるAさんの賃金を合計すれば月174,000円、労働時間を合計すれば38時間となり、被用者保険適用基準を十分に満たしています。改めて確認すれば、基準は次の4つ全ての充足です。
(A) 所定内賃金月額8.8万円以上
(B) 週所定労働時間20時間以上
(C) 雇用期間の見込2か月以上
(D) 学生ではない
ところが、実際にはX社とY社の何れからもAさんに関し「被保険者資格取得届」が日本年金機構に提出されることはありません。被保険者の資格があるか否かは事業所ごとに判定されるためです。Aさんからしてみれば、自らは雇用者以外の何者でもないのですが、国民年金に加入し、月17,510円の国民年金保険料を負担することになります。健康保険も、市町村が保険者となっている国民健康保険への加入となります。

こうした事業所ごとに判定するという仕組みは、とりわけ多様な働き方が推進されるもとでは、現行制度の欠陥といってもよいでしょう。本来であれば、Aさんの勤務先が1つであろうが複数であろうが、Aさんの所定内賃金月額と週所定労働時間の合計によって第2号被保険者となるか否かが判定されるのが合理的です。飽くまで、Aさんという1人の人に着目しなければなりません。
では、どうすればよいでしょうか。例えば、X社、Y社ともすべての雇用者についてマイナンバーとともに基本給と週所定労働時間を日本年金機構に報告し、日本年金機構でそれを合算して第2号被保険者となるか否かを判定するようにすればこの欠陥は是正されます(図表2)。
