まずは前回のおさらいです。報酬比例年金の所得代替率は、2024年財政検証では24.9%となる見通しでしたが、マクロ経済スライド調整期間の2036年度への一致により2%ポイント低下し22.9%となります(図表1)。他方、基礎年金は、2024年財政検証では12.8%まで低下する見通しでしたが、調整期間一致により3.9%ポイント改善し16.6%となります。

では、厚生年金保険制度の加入者(第2号被保険者)の受け取る年金、すなわち報酬比例年金と基礎年金の合計は、調整期間一致によってどうなるのでしょうか。図表1の点線どうし、実線どうしを足し合わせたものが図表2です。調整期間一致によって、2046年度以前の所得代替率は、一致をさせない場合(2024年財政検証)に比べむしろ低下します。しかし、以降、調整期間一致の効果が表れます*1。とはいえ、所得代替率の改善幅は1.9%ポイント(▲2+3.9)にとどまります。

モデル世帯*2の所得代替率であれば、もう少し見栄えがよくなります(図表3)。モデル世帯の受け取る年金は、報酬比例年金+基礎年金2人分ですから、図表2に基礎年金1人分を加えるとモデル世帯の所得代替率になります(図表3)。調整期間一致による効果が表れるタイミングが2041年度に前倒しとなり、所得代替率の改善幅も5.8%ポイント(▲2+3.9×2)に拡大します。

なお、厚生労働省が前面に出しているのも*3、まさにモデル世帯の所得代替率です(図表4)。調整期間一致は、2029年財政検証の宿題となっていることは前回お話した通りです。調整期間一致の効果を過大に見積もらないよう、多様な世帯形態に等しく目配せしながら議論を進める必要があります。

(2026年5月8日)
*1 確認しておくべき重要なポイントがあります。効果が表れるのが20年後であることは、足下の受給世代にとっては好ましいことではないかもしれません。しかし、年金財政にとっては好ましいことです。給付が抑えられた分が積立金として積み増され、将来の受給世代の給付に充てることができるからです(図表4も参照)。
*2 所得代替率(1)モデル世帯の留意点 | 超党派年金制度改革データベースを参照。
*3 厚生労働省HPにおける「将来の基礎年金の給付水準の底上げについて4.将来の基礎年金水準の低下への対応」の「法制上の措置を講じた場合の保険料と給付の変化」のグラフは、2025年改正を踏まえたものに切り替えられており、図表4の数値と若干異なっています。2024年財政検証の最終的な所得代替率は50.4%ではなく51.8%、マクロ経済スライド終了年度は2057年度ではなく2052年度、調整期間一致年度は2036年度ではなく2037年度となっています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00023.html