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年金制度の現状と課題【解説】

なぜ年金制度は難しいのか?

多くの人が「年金制度は難しい」と言います。その理由は大きく4つ考えられます。

第1に、年金制度を理解するためには、年金数理、心身の障害、および積立金運用など幅広い知識が必要になります。また、「標準報酬月額」や「マクロ経済スライド」といった独特の専門用語もたくさんあります。

第2に、過去に年金制度の改正がくり返されてきたことも理解を困難にしています。急に制度を変えると不利益を受ける人が多くなるため、制度改正が行われる際には「経過措置」が通常設けられます。たとえば、厚生年金の支給開始の60歳から65歳への引き上げは、3年ごとに1歳ずつ12年間かけて引き上げられました。つまり「年金の支給開始年齢は何歳か?」という質問への答えが3年ごとに変化するわけです。

第3に、年金制度の改正は必ずしも合理的に行われるわけではありません。理論的な望ましさより、政治的な思惑が優先されるケースがままあります。たとえば少子高齢化が進むと、給付抑制は避けて通れません。そのときに「10年かけて給付を2割抑制します」といえば分かりやすくなりますが、政治はそうした分かりやすさを嫌います。国民受けが悪いと考えるからです。そこで、「マクロ経済スライド」のような複雑でわかりにくい仕組みが採用されることになります。「マクロ経済スライド」と言っておけば、それが実際には年金給付抑制の仕組みであっても、国民にはそうとは思われません。このように政府が意図的に複雑でわかりにくい制度をつくってきた歴史があります

第4に、年金制度に関する政府の説明の不味さも、年金制度の理解を難しくしています。最近では、「年収106万円の壁」がその際たる例です。配偶者の扶養にとどまるよう、「年収106万円」を超えないように就業調整されたパート労働者の方も多くおられるでしょう。しかし、実際には「年収106万円」というのはかなりミスリードです。106万円は、法律に記載された基本給月8.8万円の12倍にすぎず、しかも、残業代や通勤手当はそこには含まれません。一時的に残業代が発生して、年収が106万円を超えてもただちに配偶者の扶養を外れるということはないのです。

また、皆さんが受け取る「年金定期便」も誤解を招きかねない書き方になっています。年金定期便には「これまでの保険料納付額(累計額)」という欄がありますが、その累計には事業主の負担は含まれていません。さらに保険料の累計額には金利相当分が含まれていません。たとえば、もし金利3%の複利で銀行に預金していれば24年で約2倍に増えていたはずです。事業主負担や金利を無視して、年金の魅力をアピールする意図があるのかもしれません。しかし、こういった態度が年金制度への正しい理解をむしろ妨げているように思います。

以上のように年金制度が理解しにくいのには理由があります。年金制度への国民の理解を得るためには、簡素でわかりやすい制度が必要です。少子高齢化で負担と給付のバランスが悪化し続けるなかで、年金財政の厳しさを正直に国民に説明し、国民の理解と納得を得ながら持続可能な年金制度を再構築していくことが大切です。


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